第5章 不穏な空気の中
うらたぬきside
「だから、協力して欲しいの。
彼らを確実に捕らえる為に」
様から語られた真実。納得できる点は多くある。
あの時、そらるさんとまふまふさんはluzの所で修行しており、無関係、として一応の謹慎になった。
俺達は仇討ちに駆り出され、何人もの裏切り者が死ぬのをこの目でみた。
普通は死の恐怖や、やり遂げた歓喜の中にいるものだ。だが、あいつらは無表情だった。
まるで暗示が解けたように。
いや、本当に操られていたのだろう。
本家は分家に操られ、滅亡の道を歩んだ。
そして、ボスの家系は一人娘を残し、死亡。
彼女は事実を知り、仇を討てる機会を伺っていた。
なら、その機会とはなんだ?
それはおそらく、俺達に関係している。
今、様は動き出しているのだから。
俺達が来て変わった事、護衛か?
いや、違う。
婚約者としての噂だ。
もし子供が出来たとしたら、次のボスはその子供になる。
あいつらはそんな事をさせるわけにはいかないんだろう。狙わなければならない標的が増えてしまう。
だから、動きだした。
そらるさんとまふまふさんと目的は違えど、様にとって護衛はちょうどよかったんだろう。
彼らへの餌となるから。
ここまで思考が回り、俺は改めて様を見た。
そらるさんとまふまふさんという、頼りにしている二人を頼る事ができず、一人で計画をたてていた御方。
とても狡猾で強かに見えるが、話の端々でみせる表情はとても不安げだった。
怖いのだろう。
当たり前だ。彼女は自らを守る術など持っていないのだから。
俺は、自分の立場なんて関係なく、彼女を護りたい。そう思う。
『分かりました。協力させていただきます』