第5章 不穏な空気の中
「様、奴らが生きている理由を話したら?」
『それもそうね。
うらたぬき、あの毒がどこからのものだったかは覚えてる?』
luzの提案に乗り、うらたぬきに問いかけた。
真実を知らない彼と私達では話がずれてしまう。初めから話した方が早いだろう。
「相川家と一ノ瀬家です」
『そう。度々側近を出してきた二つの家よ。そらるとまふまふの家系でもある。』
「でもあいつらは当時本家の長男を差し置いて、そらるさんとまふまふさんがらボスに召し抱えられた事を恨んでいました」
『確かに恨んでいたわ。現に実行役は本家だったもの。
でも、彼らを焚き付けたのはそらるとまふまふの生家よ。彼らの長男が選ばれなかったからという理由でね』
「なっ⋯⋯自分の息子ですよ」
『ええ、それでも、家の長男が侮辱された事に変わりない。そう考えたみたいよ』
「なら、もしかして⋯⋯」
『察しがいいわね』
驚愕の表情を浮かべるうらたぬきをみて、微笑んだ。
察しがいい人間は好きだ。全てを語らなくていいのだから。
『生き残っているのはそらるとまふまふの兄。
彼らは私とそらる、まふまふを殺し、ファミリーを潰そうとしている』
「潰すって⋯⋯そんな事、出来るわけがない⋯⋯」
『私を殺した時に起こる、後継者がいないという動揺。その時に必ずファミリーは襤褸を出すでしょう。その時にそらるとまふまふも居なければ、ファミリーは上手く立ち回ることなんて出来ない。
そうなれば、いとも容易く残りのファミリーを捕らえられる。全員牢屋行きね。幹部以上は死刑を免れる事は出来ないでしょう。
こうなると、完全にファミリーは再起不能ね』
私がそう言うと、うらたぬきは考えこむ。
当たり前だろう。正しいと思っていた事が偽りだったのだから。
しばらく考えこんだ後、うらたぬきはゆっくりと口をは開いた。
「もしかしてあの二人は、最近政界に多大なる力を持っている、一ノ川家ですか? 」
『そうよ。よく分かったわね』
「珍しい苗字だったので、覚えていました。でも、確かに、彼らを何も無しで捕らえるのは難しい。
これからファミリーが動きずらくなります」
『だから、協力して欲しいの。
彼らを確実に捕らえる為に』