第1章 プロローグ
「これで、今日のレッスンは終わりです」
『ありがとうございました』
「いえいえ、構いませんよ。それでは、ごきげんよう」
そう言い、先生は帰られた。
『クロ、パソコンを』
「りょうかーい。クロは僕の分も紅茶ちょうだい」
聞こえたのはクロの声ではなく、高めの男の声。確信しつつも振り返ると、そこには天月がいた。
『おかえり、天月。何か分かったの?』
「うん、そらるさんとまふまふさんが動いてるから色々探ってた。環境が変わりそうだねー」
そう言いながら、天月は手際よくパソコンをセットする。その表情は楽しみでありながらも、何かを憂いているようだった。
『環境?』
「そう。は先代の遺言を覚えてる?」
『一つ、がボスとなりファミリーを維持していく事。
一つ、が年頃となれば、幹部と側近が婿候補を選出し、婚姻をする事。
一つ、がなした子を次代のボスとする事⋯⋯つまり⋯⋯』
「うん、婿候補が選出された。あ、ありがとクロ」
「婿候補かー。どんな人なん?」
クロが紅茶を入れ終わり戻ってくる。これからは三人でお茶会だ。
天月はクロの質問を聞き、USBを取り出した。
「データはこちらに」
私はそのUSBを受け取り、起動したばかりのパソコンに差し込んだ。