第1章 プロローグ
重い目を開く。こんな夢を見た日は気分が悪い。
布団の中にいようと思ったが、そういう訳にはいかない。
何とか起き、ベッドから立ち上がる。
その瞬間に聞こえるドアの音。
『おはよう、クロ』
「、おはよう。今日のお洋服はどんなのにする?」
『紺のやつがいい』
「了解。暗めの服を選ぶって事は、嫌な夢でも見たの? 今日は嫌なこともないはずだし⋯⋯」
『まあね』
ドアから入って来るのはメイドのクロ。私専属の子だ。
こうやって喋りながらも手際はいい。クローゼットから服を取り出し似合う小物を選び始める。
服を着替えながら、今日の予定を確認する。
『今日は家庭教師が来るだけよね?』
「うん、そうだよ。ダンスとマナーだね」
『ん。小物は選べた?』
「うん、服は暗いから明るめな。メイクもするから来て」
クロの言う通りにドレッサーの前へと向かう。そこにはいくつかのアクセサリーと化粧道具が用意してあった。
「それじゃ、やるからね」
『よろしく』
クロが私のメイクをするのはいつもの事だ。
自分でもできるが、クロの方が何倍も上手い。それに、自分でやるとクロも不服そうな顔をするのだ。自分でやりたいらしい。
頬を触るクロのあたたかい手が心地いい。