第5章 不穏な空気の中
うらたぬきside
志麻と組手をしていたら、左手首を痛めてしまった。
利き腕ではないとはいえ、今の侵入者が多い今は直しておかないといけないだろう。
医務室に行くと、luzはいなかった。
代わりに不在の事を示す札がドアに掛けてあった。
勝手に部屋に入り、棚を漁ろうとする。
その時、空いていることがない扉を見てしまった。
あの奥は確かカウンセリング用に防音になっているはずだ。
でも、開いていては意味が無いだろう。
微かに声も聞こえてくる。
この声は様とluz?
「まあ、それも少しある。命を狙われるのはわかっているけど、覚悟していてもね⋯⋯」
「最近は部屋でも護衛が居るから落ち着けないんやろ?」
「クロともゆっくり話せてない。部屋でこうやってだらける事も控えてる」
やはり様も疲れていらっしゃるのだろう。
誰かが常に近くにいる生活なんて緊張の糸を緩ます時がないはずだ。
この話は俺が聞くべきではないはずだ。
湿布だけ取って早く出ていこう。
そう思い湿布が入っている缶を探すが、会話は耳に入ってくる。
「ここでは肩の力抜いて。護衛くらいには素を見せたら?」
「無理よ。彼らがそらるとまふまふに言わない可能性はないもの。それに坂田やセンラは優しいから、確実に私を止めるわ」
「まあ、俺もできれば止めたいんやけど」
素? 坂田やセンラが止める?
やはり、パーティーで見た時の違和感はあっていたんだろう。
様は何か隠している。
その為に猫を被り、そらるさんやまふまふさんですら騙しているんだろう。
「でも、luzは私の事を知ってるから止められないんでしょ?」
「まあ確かに、先代の仇が生きてるって知ってるから止めることは出来ないんやけど。
確かに俺は医者やけど、ファミリーの一員。先代の仇は倒したい」
先代の仇
あいつらは確実に全員始末したはずだ。
生き残りなんているはずがない!
俺達もあの場にいた。生きているものなんて居ないはずだ。