第5章 不穏な空気の中
突然聞こえた音。隣の医務室からだった。
よく見ると、僅かに扉が空いていた。これでは防音の効果はない。
私は壁際に隠れ、luzが銃を構え扉を開け放つ。
「うらたぬき? どうしてここに?」
私は扉から顔を覗かせる。
そこに確かにうらたぬきは居た。
彼は後悔の表情を浮かべ、左手首を抑えていた。
床には湿布を入れてある缶が落ちていた。おそらく先程の音はそれが落ちた音だろう。
聞かれていた。おそらく全てを。
彼の表情がそれを物語っている。
luzは静かに銃を降ろし、ホルダーに納めた。
後のことは私に任せるつもりなのだろう。扉の前から退き、私に場所を譲る。
『どこから、聞いていた?』
「護衛に素を見せられないっていう所からです」
おそるおそる、しかし、はっかりとうらたぬきは答えた。
やはり、全てを知ってしまっている。なら、もう巻き込むしかないだろう。
彼に口封じをしても、それが効くとは限らないのだから。
『入りなさい、話はそれからよ』