第5章 不穏な空気の中
「で、どうした? あの部屋行く?」
『うーん、そうするわ』
「なら、先に行ってて。お茶持っていくから」
luzに言われるまま足を進める。
手前の部屋は誰でも入れる医務室。ここで怪我の治療をしたりする。ちなみに隅にはカーテンで仕切れるベッドも置いてある。
普段は開けられない奥の部屋、ここはカウンセリング室だ。
よっぽどの大声で話さない限り、声が漏れる事は無い。
向かい合わせに置いてあるソファに寝そべり、息をつく。
カチャカチャと音を立て、luzが部屋に入ってくる。
「本当に疲れてるな。やっぱり侵入者のせい?」
『まあ、それも少しある。命を狙われるのはわかってはいるけど、覚悟していてもね⋯⋯』
「最近は部屋でも護衛が居るから落ち着けないんやろ?」
『クロともゆっくり話せてない。部屋でこうやってだらける事も控えてる』
「ここでは肩の力抜いて。護衛くらいには素を見せたら?」
『無理よ。彼らがそらるとまふまふに言わない可能性はないもの。それに坂田やセンラは優しいから、確実に私を止めるわ』
「まあ、俺もできれば止めたいんやけど」
『でも、luzは私の事を知ってるから止められないんでしょ?』
「まあ確かに、先代の仇が生きてるって知ってるから止めることは出来ないんやけど。
確かに俺は今は医者やけど、ファミリーの一員。先代の仇は倒したい」
『彼らを捕らえる算段はついてる。後は動くのを待つだけ』
「計画を練り直す気はない?」
『ないわよ。luzも心配性ね。私の事をよくわかってるでしょ』
「96猫達並には分かってるつもりやけど。それでも心配になる」
『天月がやってくれるから大丈夫よ。彼はきちんと仕事をしてくれるもの』
「死ぬつもりはないよな?」
『当たり前よ。誰が死んでやるものですか』
私はソファに寝そべりながら、luzは座りながら、二人の視線がぶつかり合う。
緊張感が高まり、自然と呼吸を止めてしまう。
ガチャン