第3章 四人の護衛
『そういえば、坂田も西の出身なの?』
「坂田は俺とセンラの間ぐらいですね。ちょっとちゃうでしょ?」
『そうね。同じように聞こえるけど、三人とも違うわね。志麻はこちらの言葉になってるけど、方言のセンラと坂田でも違うわ』
「それでも通じるって、方言っておもろいですやろ?」
『センラはどこの立場なの?』
「うーん、方言推進委員会の副会長にしときます」
「方言推進委員会って、あはははは、おもろ! 副会長がセンラなら、会長は誰なん?」
「会長は⋯⋯坂田で」
『坂田なのね。そういえば、うらたぬきは方言では無いのね』
「うらたんは東の出身ですからね」
『東? あなた達とは出身が全然違うのね』
「そうですよ。俺達が初めて会ったんはこの街ですから」
彼らの出会いの秘密を探れる。 そう思ったが、車は目的地に到着したみたいだ。これ以上情報を探るのは危険と判断し、会話を止める。
車が止まると、志麻がドアを開け、再びエスコートしてくれる。
『センラ、運転ありがとう』
「いえいえ、別に。さて、探し物は髪留めでしたね。いいの探しましょ」
「確か、二階に店が多かったはずやで」
『志麻、センラ』
二人が歩み出そうとするのを、私は名前を呼び、止める。二人は振り向き、疑問を感じながらこちらを見た。
今日を、ただの買い物にするのは楽しくない。彼らは隠されているが婚約者候補。なら、私の手の中で舞ってもらう方が面白いだろう。
『今日は外だし、人の目もあるから、護衛とお嬢じゃなくて、友達として行きたいな』
「護衛とお嬢じゃなくて⋯⋯」
「友達?」
『うん、そう。友達三人の買い物。だから、様付けも敬語もなし、呼び捨てとタメ口ね!』