第3章 四人の護衛
出かける準備を終え、適当にスマホをいじろうか。そんな事を思っていると、護衛部屋の扉が開いた。
入ってきたのは志麻。いつものスーツとは違い、少しカジュアルでありつつも、気品がある格好をしていた。
「おはようございます」
『おはよう』
「センラが下で車の準備をしてます。出発出来ますか?」
『ええ。クロ、行ってくるわね』
「はい、いってらっしゃいませ」
二人で部屋から出る。志麻は護衛らしくエスコートをしてくれた。だが、やはりその距離は近い。普通の少女ならば、胸が高鳴ってもおかしくないほどに。
私は顔をわざと少し赤らめ、志麻を見る。すると、彼は優しく私に微笑んだ。私はすぐさま顔を正面へと戻す。
女慣れしているのがよく分かる。なかなかこんな色気を出せる人は居ないだろう。確か、志麻は戦闘担当のはずだ。ならば、情報担当のセンラはどうだろうか。色気などは感じることはなかったが。
そんな事を思っていると、車に着いた。ドアの前ではセンラが待っていた。
「様、おはようございます」
『おはよう、センラ』
「どうぞ、お入りください」
センラがドアを開けてくれる。私が乗り込むと、ドアを閉めた。そして、二三言彼らは会話を交わしていた。それが終わると、志麻は私の隣に座り、センラは運転席に座る。
「ほんじゃ、出発しますね」
『ええ、頼むわ』
「安全運転で頼むな」
「まーしー、分かっとるって。様が乗られてるし、危ない運転はせんよ」
ゆっくりと車が動き出し、外を目指す。
車内でずっと沈黙しているのも暇だろう。私は会話の種としてセンラの方言を出した。
『センラは西の方言を話すのね。もしかして、その地方の出身なの?』
「ええ、そうですよ。止めた方がええですか?」
『いえ、方言は好きよ。でも、あまり近くに話す子がいないから』
「俺はセンラよりさらに西の出身なんですけど、こっちに来て、直ってしまいました」
『そうなの。でも時々出ているわよ。やっぱり、話をしていて楽しいわ。イントネーションが違うだけで、こんなに変わるのね』