第3章 四人の護衛
会話をしているうちに、グリーンハウスに着く。チューリップやツツジなども咲いているが、なんと言っても、目を引くのは中央にある桜だろう。
「うわー、綺麗やね」
『そうでしょ、ここはお気に入りの場所なの。
こっちに来て、ベンチがあるのよ。そこに座りましょう』
坂田を引き連れ、ベンチに向かう。そこは少し高くなっていて、全ての花を見ることが出来た。
「ここ凄いんやね。何年も本邸に居たけど、知らんかったわ」
『基本的にファミリーの人は入れないからね。こういった施設に入れるのは、ボスの血族か管理人だけ』
「血族?」
『うん、そう。ファミリーも家族だけれど、ボスの家系の血を引く者達の事。言うならば、プライベートの関係がある人の事』
「じゃあ、僕一人やったら入れなかったん?」
『うん、入れないわ。一人一人のIDカードに行動制限があるのは知っているでしょ? ここも入るのに必要なのよ。でも、私の護衛だから、解除されてるかもね』
「もしかしたら、探さんとあかんかもしれへんしな」
『探されるなんて事はするつもりないけどね』
こうやって会話を続けていて思ったが、坂田は私に対する緊張があまり無いように感じられた。
距離を近づける為でも媚を売る為でもなく、親密な仲間として接するために。
本来ならば、無礼だと叱られるはずなのだけれど。
それがとても嬉しい。
生まれて初めて、友達が出来たみたいだ。
気づいたら、彼から情報をとるなんて忘れて、話し込んでしまっていた。
『坂田は、好きな花とかある?』
「うーん、あ、あれ綺麗やな。んー、何これ?」
『これはポピー。坂田、あなたにお似合いよ。』
「なんで僕に?」
『ポピーの花言葉は陽気で優しい。あなたたみたいでしょ』
「僕は陽気で優しいん?」
『私にとってはね。じゃあ、そろそろ戻りましょう。クロが心配してしまうわ』