第3章 四人の護衛
昼食を食べ終わり、しばらくした頃ノックが鳴る。その音は、護衛部屋に続くドアだった。
私は読んでいた小説から視線を上げ、そのドアを見る。クロが私の意思に気づき、ドアを開けた。
「失礼しまーす、坂田です。護衛が交代した事を報告しにきました」
『坂田、よろしくね』
「はい、お願いします!」
『いきなりで悪いんだけど、散歩に行くから付いてきてもらっていい?』
「え、散歩?」
『うん、いい?』
「はい!」
私は本に栞を挟み立ち上がる。クロは部屋に居るみたいだ。
『じゃあクロ、行ってくるわ』
「はい、いってらっしゃいませ」
『坂田、行きましょう』
「はい!」
二人で横に並び、階段を降りていく。
どこに行こうか。散歩も突然思いついたものだ。行く場所は決めていない。
そう言えば、春のグリーンハウスに今は花が咲いているはずだ。そこにしようか。
無言でどんどん歩いていく。坂田は話しかけようとするが、躊躇っているようだった。
『どうしたの、坂田?』
「いや、どこに行くんかなって思って」
『春の花用のグリーンハウスに行こうと思ってるの。あそこは今、見頃のはずだから』
「へー、そんなんあるんや」
『この建物は改装されてるけど、女の人が多い時期もあったらしくて、色々な物があるの。プールとか天文台とか』
「女の人?」
『そう。ボスが何人も妻を持つことがあったから。全てその当時のボスから妻への贈物よ』
「今はそうじゃないん?」
『お爺様は三人の妻が居たらしいわ。でも、お父様にはお母様だけだった』
私の雰囲気が変わったのが分かったのか、坂田は慌てて話題を変えた。
「その春のグリーンハウスにはどんな花があるん?」
『クロが持ってきたのは、カーネーションだったわね。他にもあるはずよ。確か、春のグリーンハウスには、桜の大木もあったはず』
「桜があるん?」
『ええ。昔、桜が好きな方がいらしたそうよ』