第10章 彼らの思い
『センラ、あなたのその気持ちは恋なの?』
私から離れようとしていた彼の動きがピクリと止まった。そして、まじまじとこちらを見てくる。
「なんでそれを聞くんですか?」
『だって分からないんだもの。
そらるもまふもクロも天月もluzも、私に向ける感情は家族愛や忠誠だもの。それに、私が心動かされる人が周りにいなかったから。
私は恋愛がよく分からない⋯⋯』
好き、護りたい、一緒にいたい
これらは分かる、でも
恋する、愛する、触れたい
こんな事をしたくなる感情を私は持ったことが無い。分からない。
私の表情を見て、センラは何かを決心した。その証に目に意思が宿る。
「分かりました。なら、センラが教えます。恋も愛も、その先も。
全部、センラが教えさせて下さい」
そう言い切った彼の顔は自信に満ち溢れていた。
私は彼の思惑も方法も分からない。だけど、任せるのしかないのだろう。
ボスとして、マザーとして、次なるボスを成さねばならない身として
私は誰かに身体を委ねなければならない。
そんなことは知っている。小さい頃から暗黙の中でそれはずっと教えられていた。けれど、その相手ぐらいは選ばさせてほしい。
婚約者となるのは前提条件。これは彼らの意思表示だ。
彼らの中で、私に恋や愛を教えてくれる人。そんな人になら自分の身体を任せ、委ねられる。
『ええ、頼むわね、センラ』