第2章 わん!
満「待って、今日家庭科実習だよね?」
皆で歩いて学校に向かう途中、ふと隣を歩く満が驚いたように私を見る。
『? そうだよ。あ、満の鞄の中にタオルとエプロン入れといたから』
満「え!? まじか。あ、ありがとう」
『多分忘れてるなって思ったからね』
良かった。やっぱり忘れてたんだ。
満「ちょっと見直した」
『ちょっとかい』
茅「もう真白はオカンやな」
『そのオカンは嫌だな』
茅「なんでや?」
褒めてるんやで?って言う茅兄。
オカンって恋愛対象にならない人物じゃない。それじゃあ男子みんな、私をオカンとしか思わないって事だし。
ってあれ、考え過ぎか?
茅「オカンなー」
蒼生「待って、その、茅兄のオカンって大根抱えたパンチパーマの丸っこいお母さんを想像しちゃうんだけど」
茅「ほう。ってどんなマザーやねん!」
オカンからマザーに変わってますけど!?
満「プアハハ」
『え、今の面白かった?』
口元に手のひらを丸めて笑う満に目が点になる。
茅「どうやら満ちゃんのツボには、ハマったみたいやな」
満「だからちゃんをつけるな!」
茅「おー怖っ」
そうがやがやする二人。
蒼生「ふっふふーん♩」
私は白銀の髪を揺らしながら前を歩く蒼生兄を見た。
紺色のブレザーに、鼠色のズボン。
すらっと着こなす彼は軽快よく歩く。
そんな蒼生兄は極度の野菜嫌いだからな。
本当、キャベツ、レタスも嫌いだし
トマト、人参、セロリ……ああ、挙げたらきりがない程いっぱいある。
果たして彼にどうやって野菜を提供しようか。
「ねぇ見てー今日もイケメンだわ」
ん?
「めっちゃカッコいいよね!私茅くんのファンなんだよね」
「カッコいいもんね。でもやっぱり私は蒼生くんだわ」
「いやいや!可愛い顔した満くんでしょ!」
何処からかそんな声が聞こえてきた。
そうか、もう学校近くか。
また入学して半月だけど、だいぶ慣れて来たな。ま、相変わらず学園内にある桜の木はまだピンクの葉を残しているけど。
ーーって今日日直だった!