第2章 わん!
シンクでゴシゴシとスポンジで皿を洗う理央兄が口をこぼす。そんな彼の隣、食器をタオルで拭き上げていた私はクスっと笑みがこぼれた。
『そうだね、お母さんの料理の時は蒼生兄も茅兄も残してたもんね』
理央「ああ。まぁ、母親は苦手な物ばかり出してたから仕方ねーけどな」
『でも栄養的にはお母さんの料理の方が良いんだよね。やっぱり、私もピーマンとかセロリと椎茸とかレバーとか人参を出すべきかな』
理央「待て待て、あいつら苦手な食べ物ありすぎだろ!」
慌ててこちらを見る理央兄が面白くて、ぷっと口がとんがる。
さては、理央兄はあまり兄弟のこと見てないなー。
『あはは。まぁ、大半は蒼生兄だけど』
理央「だろうな。」
『でも、理央兄と戌里兄と満は好き嫌いなしに食べてくれるから助かってるよ」
本当、この3人は雑種だと思う。
多分ペットフードでも食べるんじゃないかってほどに。
あ、理央兄は天然だからいけそうだわ。
(サイコパス的な思想↑)
理央「ま、出されてるもんを残すのは良心が痛むからな」
『優しいね。それを蒼生兄に言って聞かせて欲しいよ』
理央「あいつは言っても無駄だろ。ま、苦手な物は克服してもらいたいけどな」
苦手な物を克服、か。
そうか!
これから彼女とか出来ても料理に野菜あったら食べない可能性あるもんね!そしたら彼女は泣き崩れて自害しちゃうかもしれない。そしたらその保護者が親を出せ!ってなって、私の親が加害者になっちゃう!!
あわわっそれは避けなければならない!!
理央「なんかすげー壮大な物語を開いてねーか?」
『分かったよ!』
理央「は?」
『私、蒼生兄、茅兄の野菜嫌いを克服する為に頑張るの巻き。を決行する事に決めた!』
理央「は?」
理央の隣、何かに燃え上がる真白にそれ以上は何も言えず、理央は無心で皿洗いに集中するのであった。