第3章 とぅー!
戌里「良かったね。いつも星1つで悔しそうだったから」
『本当だよー。私と祭、瑞希の3人で仲良く頑張って作ってるのに、なんか無下にされた気がして嫌だもん』
戌里「ふふ、本当に彼女らが好きなんだね」
『ま、まぁね。祭は逞しい乙女って感じがして面白いし、瑞希はスポーツ馬鹿だけど頼りにはなる。そんな2人は、私にとって大切な友達だからね』
戌里「そうか、楽しそうでなによりだよ」
『うん』
隣から聞こえて来る声が優しくて、思わず鶏肉を切りながらニヤニヤするという恐怖な映像になってしまっている。
でも、大切な友達を褒められるのは嬉しい。
戌里「ま、彼女らがいるなら安心かな」
むむ、安心?
『ちょっと戌里兄、友達くらい私にだって出来るよー』
戌里「あはは、違うよ。真白に変な虫がつかなくて安心。ていう意味だよ」
え、変な虫?
戌里兄のこぼした発言に驚いて見上げた刹那、指先に鋭い痛みが走った。
つ!?
戌里「真白!」
やばっ、手切っちゃったよ!
思わず手を引っ込めようとしたが、その手を戌里兄に掴まれる。
戌里「大変だ」
そして、その手を自身の口元に近づける戌里兄。
『え、戌里、兄?』
驚く私をそのままに、血が流れる私の人差し指を戌里兄は舌で舐めとる。
『あっ、戌里兄//』
柔らかくて、少しねっとりとした感触が人差し指から伝わり、所々指先が戌里兄の歯に触れる。
待って、やめて////
指先を優しく舐められているだけなのに変な気持ちになる。そんな行為に、私は戸惑いの目を彼に向けた。
すると、金糸のような前髪の奥、熱を帯びた瞳が私を見る。
戌里兄ーー?