第3章 とぅー!
『え、な、な、な何で!?』
蒼生「ちょっとちょっと、もう動揺しちゃってさー。絶対なんかあったでしょー」
どうやらそれは一瞬だったみたいで、すぐおちゃらける蒼生兄に戻った。
『あははー。やだなー何もないよー』
バリバリあるわ!自分よ!
蒼生「そっかぁ。」
ニコッと笑っては前を向く蒼生兄。
そんな彼をちらっと見ては、私は靴に目を向けた。
『あの、蒼生兄』
蒼生「うん?」
『実はーーあ、なんでもない』
蒼生「なんだそりゃあ」
クスッと笑う蒼生兄に、胸も痛くなる。
ああ、言ってしまいたかった。
高遠さんに恨みを買われたんだ、と。
助けて、お兄ちゃんって。
でも、ーー弱い私にはもちろん言える訳がなかった。
待ち受けている見返りが怖いから。
蒼生「なんかあったみたいだね。でも、僕にとって真白は大切だし、力になれるならなってあげたいんだよ。だから、話せる内容なら僕にはなんでも言ってね?」
夕陽に照らされながら、極上のスマイルを浮かべる蒼生兄に、私は何も言えずただ頷くしか出来なかった。
私が傷ついてるのは蒼生兄のせいだって知らされた時、蒼生兄はどうなるのかな?
それは恐らく、彼の明るい太陽みたいな笑顔を奪うことになるだろう。
それなら、高遠さんとの事情は私だけの秘密にしてしまおう。
そう、誰にも言わず、ずっと秘密にーー