第2章 存在証明
ミホークは大剣を掲げた。
自分の覇気の一撃を受けて、折れるどころか刃が潰れることもなかった。
その様子に気づいたつるが、ミホークに問いかける。
「その剣は、一体・・・」
「あまりにも頑丈に作られすぎている。しかも、ただ鉄を叩いた剣ではない。見たことのない素材だ。俺の知る限り、このような剣を作り出すのは不可能だ。女の言う異世界でなら、別かもしれんがな」
一体何を斬るために作られた剣だろうか。
見れば見るほど美しく妖しげで、どんな曰く付きの妖刀よりも不気味に感じる。
まさに、魔女が携えるにはもってこいの得物だ。
「私はこの大剣が憎かったよ。これを持つ限り、私たちは戦わなければならなかったから」
物語を話すかのように、ナマエが言葉を紡ぐ。
つると向かい合うように座っていたソファから立ち上がり、ミホークが持つ大剣へ手を伸ばす。ミホークは無言でそれを渡した。ガシャ。やはり重たい音が鳴る。
「手入れなどしたこともない。鞘もなく、雨や雪の降る日も常にむき出しで背負っていた。それでも激しい戦いの中折れることなく、刃こぼれすらしない。傷ひとつ付くことのない忌々しい剣だった。私たちを少しも休ませることなく戦わせ続ける存在だった」
柄に手を伸ばし、するりと撫でた。刀身の鍔付近に小さな刻印がある。それにも優しく触れた。
「まさか、今になってこれが、自分の存在を証明するものになるとは思わなかったよ」
ナマエはしっかりと柄を握った。
持ち主の手に返った剣は、より一層刃の輝きを増した。
ガシャン、と背中にその大剣を収め、ナマエはミホークを見やった。
「何年もこいつを背負ってきたが、私は何も知らなかった。気づいてくれたこと、感謝する」
「剣士なら分かることだ。修行が足りんな。感謝されるようなことでもない。」
ミホークのそっけない言葉に、ナマエは微かに笑った。
そしてくるりと振り返り、つるに問いかけた。
「信じてくれるか、つる中将」