第4章 魔女の正体
「半人半妖である戦士たちが人間として生きるために、人間を殺してはいけないという掟があったのか」
「その通り。私たちが剣を振るうのはあくまで妖魔のみ。人間を殺した時点で、私たちは身も心も完全に妖魔になるということだ」
「なるほどな。もし、主の様におれがその世界に行ったとしたら、簡単に妖魔とやらを殲滅できるだろうな」
にやり、とミホークがおどけてみせるものだから、ナマエは思わず吹き出してしまった。たしかに、ミホークの黒刀にかかればどんな妖魔も一瞬で真っ二つになるだろう。
そんなありもしないことを想像するのが、とてつもなく楽しかった。
「そうやって、笑うことを増やしていけ。今は、いい顔をしている」
そういうミホークも普段の仏頂面ではなく、優し気な顔をしていて、ナマエは少しだけ気恥ずかしさを感じた。
「向こうの世界でのことを無かったことには出来んだろう。でも今、主は戦わなくていい。ただおれといるだけで、他に何をしてもいいんだ」
「…あぁ、そうだな」
大剣は既に無くては落ち着かない物になってしまっているが、鎧だけは脱いでもいいだろうか。
普通の女の服装で、街を歩いてみたりしてみようか。
そんな想像が擽ったくて、やはりナマエは気恥ずかしくなった。
しかしナマエはまだ知らない。ミホークが目指すクライガナ島シッケアール王国では、オシャレをして歩く街などとうに消え去っているということを…。