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鷹の目と銀眼の魔女

第2章 存在証明


ナマエの話を聞いて、ミホークは訝し気に眉を寄せた。
語られる内容は、到底信じられる話ではなかった。
それはつるも同じだったようで、何度か同じ質問を繰り返している。

「ナマエ、もう一度聞くけど、あんたの故郷は、」

「信じられないのは分かるが、本当のことだ。私の故郷はこの世界にはない。なぜなら、私はこの世界とは全く別の世界から、突如飛ばされたからだ」

ナマエは、自分は異世界人なのだと言った。
子どもでもつかないような嘘だと思う。
しかしミホークはそう笑い飛ばすことはできなかった。
先ほどナマエから渡された大剣に目を落とす。
見事な剣だ。長年使っているであろうことは柄を見れば分かる。刀身は刃こぼれ一つなく、美しくギラギラと輝いている。
そして、これまで様々な剣を見てきたミホークだからこそ、気がついた。

「バカにしているのかい、ナマエ」

「別に信じろとは言わない。私も未だ理解が追い付いていない部分はある。島の者にこの世界の常識や現状を教えてもらったが、いまいちピンと来ていないからな」

「当事者がそんなに呑気にしていたら誰も信じやしないよ」

「俺は信じるがな、女の言う異世界というものを」

ナマエとつるの終わりの見えないやりとりに口を挟む。
意外な言葉に、二人とも驚いた顔をしてミホークを見た。

「鷹の目、こんな辻褄の合わない話を信じるのかい?」

「辻褄なら合う。この大剣が異世界から来たという摩訶不思議な現象を証明している」

そう言って、床にナマエの大剣を突き刺した。
左手でそれを支え、右手に黒刀を構え覇気を纏わせる。
つるはミホークの覇気を感じ取り、目を見張った。
まるで戦いの場で使うような本気のそれに、何をするのかと見つめていると、ミホークは躊躇いもなくその黒刀を思い切り大剣の刃へとぶつけた。
金属同士が耳障りな音を立てる。ミホークの覇気を纏った黒刀、夜を振り抜かれては、どんな剣であれ同じように覇気を纏っていなければ、刀身は折られてしまう。つるはミホークによって刀を折られる海賊も海兵も嫌という程見てきた。
しかしナマエの大剣は、事も無げにミホークの黒刀を受け止めている。
もちろんその大剣には、覇気を纏わせてはいない。



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