第2章 存在証明
正直、想像以上だった。
ナマエと名乗った銀眼の魔女を前にしたつるの感想だ。
容姿の美しさも、剣の腕前も、すべて聞いていた以上のものだった。
特に剣については、あの鷹の目すら感心するほどだ。
そんな人材を、この辺鄙な土地にただ置いておくのは惜しい。
「いきなり訪ねて悪いね、ナマエ。あんたの強さが海を越えて噂になっていたから、海軍として気になってね」
「噂になるようなことをした覚えはないが・・・」
「まぁ、色々話を聞かせてほしい。あんたの為にもなるはずさ」
ナマエは素直につる達の後に続き、軍艦までついてきた。
ナマエの住まいで話をしても良かったのだが、大勢の海軍と七武海の鷹の目に囲まれた姿を島民に目撃されるのはあまりよろしくないだろうと、軍艦へ連れてくることにした。
「おい女」
船に上がったところで、ミホークがナマエに声をかけ手を伸ばした。
もちろんエスコートなど紳士然としたものではなく、海賊らしい横暴な要求を口にしたため、つるは呆れ返ってしまった。
「剣を寄越せ」
「鷹の目、何を言っているんだい」
「この女が剣を振るわないという保証は何もない」
言われてみれば確かにそうなのだが、七武海とはいえ海賊であるミホークとて、こちらを裏切らないという保証はないのだから、つるとしては呆れるほかなかった。
むしろ、そんなミホークの言動が魔女の琴線に触れるのではないかとひやひやするところである。剣士である以上、剣を取られるというのは耐えがたいことだろうと、剣を使わないつるでも分かるのだから。