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鷹の目と銀眼の魔女

第1章  銀眼の魔女


海賊たちは自分たちの名を上げるのに必死だった。
暴れれば暴れるほどに悪名は轟き、賞金額は跳ね上がり、ひれ伏す者が多くなる。
海上で船を見つければ砲撃し、島に上陸すれば男は殺し、女子どもは好きなように弄び、全てを奪い尽くした。
そうすることで名が広がり、海軍や他の海賊からも注目され、一般人からは畏怖の目で見られた。
言い表すことの出来ない快感だった。
今、その快感を味わおうとしているところ、邪魔をするかのように女が一人立っている。

「なんだぁ、姉ちゃん。おれたちに用かぁ?」

見慣れない格好をしていた。
肩や腰回りに鎧を纏い、背中には華奢な身体に似つかわしくない剝き出しの大剣を背負っている。
明らかに、好意的な雰囲気ではない。

「それは、こちらが聞きたいことだ」

「はぁ?」

「貴様らは、この島に何の用だ。補給のための立寄りならばここを通してもいい」

剣や銃を掲げて上陸してきた海賊に、ただの補給かと聞くのは馬鹿げている。
女は、この島で略奪行為をするのなら立ち去れと言っているのだ。
海賊たちは笑った。さもおかしそうに、下品な笑い声を港に響かせた。
華奢な女一人が大剣を持ったところで、数十人という大男たちを止められるはずがない。
海賊たちの笑いはしばらく収まらなかった。

「姉ちゃん、航海中の船が島に寄るんだ。補給に決まってるだろ。少々手荒な補給だけどなぁ」

「お頭、そいつ上玉じゃないっすか。おれらで愉しんでからでも、高く売れますぜ」

「確かにな。おい姉ちゃん、大人しくおれたちに従えば、命だけは助けてやるよ」

頭と呼ばれた男がずかずかと近寄り、女の肩を抱いた。
その瞬間、女は背中の大剣を抜き、男の首にそれを突き付けた。

「気やすく触るな。海の男は汗臭い」

女のその一言に男は怒りでカッと顔を赤くした。
首元に当てられた刃を押しやり、そのまま女を力任せに殴りつけた。
華奢な身体はそれだけで宙を舞い、無様に地面に転がった。

「このくそアマが!女だと思って甘く見てりゃ調子乗りやがって!おいお前ら、この女好きにしろ」

男の言葉に、後ろで控えていた者たちが歓声を上げた。

「こんな上玉、めったにお目にかかれないぜ!」

「バカな女だぜまったく。島を物色してから愉しもうぜ!!」

「おぅ、酒と女と金だ!!今夜はいい夜になるな!!」

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