第1章 銀眼の魔女
「鷹の目、島が見えてきたよ」
結局ミホークはつるの軍艦に乗り、銀眼の魔女と呼ばれる女剣士がいる島に向かっていた。
その呼称を聞いたとき、素直に見て見たいと思ったのだ。美しい容姿をではない。銀眼の魔女と呼ばれる女の戦う姿を。あわよくば、暇つぶしの相手になってもらいたいところでもある。
「中将!海賊船が一隻、あの島へ向かっています!」
海兵の一人がつるにそう報告をしてきた。隣で話を聞いていると、どうやらその船は最近賞金首になったばかりのルーキーのものらしい。
「ふん、運の無いやつらだね。砲撃の準備をしな、射程距離に入ったら攻撃するよ」
「その必要はない」
つると海兵のやり取りにミホークは口を挟んだ。
「なんだい、あんたがあの船を沈めるっていうのかい」
ミホークは首を横に振った。あんなルーキー、わざわざ自分が切る必要もない、何の手ごたえもないだろう。
「おい、そこの海兵。あのルーキーの賞金額はいくらだ」
「はぁ、現在賞金首は船長のみ、4800万ベリーです。一般商船や上陸した島での被害は相当なものと聞いています」
それだけ聞いてミホークは、つるに視線をやった。つるはしばらく思案した後、まさかと口をついた。
「魔女の腕試しでもするつもりかい」
「魔女でダメだったら貴様らが対応すればいい。俺を楽しませる娯楽があってもいいだろう」
つるはため息をついた。全く、七武海は曲者の集まりである。そもそも正義を掲げるこちら側と、海賊側のミホークとでは考えが一致しなくて当たり前だ。
しかしご機嫌は取っておくに越したことはない。鷹の目の脅威が海軍や政府に向けられることは避けたいのである。
「分かったよ。海賊の上陸を待つ。我々も気づかれないように後を追って上陸だ」
つるが部下にそう指示を出したのを聞きつつ、ミホークは視線を島の方へ向けた。
―――いるな、強き者が。
覇気とはまた違う空気のざわつきを感じる。なんだろうか、これは。覇気に似ているが、何か違う。そして、覇気よりも妖し気に感じる。
「妖力、というやつか」
ミホークは自分で呟き、くっと自嘲した。妖力?そんなもの存在するものではない。だいぶ魔女という言葉の世界観に引っ張られているようだ。
「早く剣を取れ、魔女よ」
ミホークは鷹の目のような瞳を爛々と光らせた。
まるで獲物を見つめる鷹の様に。
