第11章 つくばねの… 〔三日月宗近/R18〕
触れると雅は一瞬びくりと震え、からだを固くしたのがわかった。
「幼き頃はずっと俺にまつわりついて添い寝もしていたのに、いつから俺を避けるようになった…」
片頬を包む手が雅の首から肩へ滑り、雅の片手を掴んで床に縫い留める。
「幼き頃はただ俺を唯一の者としていたのに、いつから他の者を見るようになった…」
俺はどんな顔をしているのだろう。
今迄の黒い感情を、俺にとっては小さく若い存在である雅にぶつける。
恐怖を覚えるはずの雅は、しかし、俺に謝ってきた。
「宗近さん…違う…違う…ごめんなさい…む、ね、ちか…聞い、て…」
俺は意味がわからず雅を見下す。
「小さい頃から優しい貴方が大好きだった。一人が怖いと言うと一緒に寝てくれた貴方は、もう顔を忘れてしまった両親以上に接してくれた、私にとって大切な人。でも私は成長するにつれて怖くなった。貴方は長い時を生きてきた刀の神さま…私のような人間の小娘には、何の感情も持っていないだろう、と」
見上げた俺を見る雅の顔は、今にも泣き出しそうに見える。
「貴方に余計な感情を持ってはいけないから、貴方には近侍としての働き以外の接触を止めないと自分の感情が止められないから…貴方を宗近さんと呼ぶようにしたのもそれから。私の感情を押し込めないと、私は自分をセーブ出来なくなりそうだったから…」
「…清光と仲が良いと聞いたが…」
「清光さんは貴方同様、早くからここにきた刀だし、偵察は苦手と言いながらも洞察力は優れてるから、私の感情に気付いてくれたの。私の気持ちを知る唯一の存在だよ」
「雅…」