第10章 変わった出陣 〔へし切長谷部/燭台切光忠〕
そう思っていると、俺たちは肩を叩かれ、見ると主が来ていた。
「主…どうしてここに」
光忠が驚いて聞くと、主は肩をすくめた。
「ごめんね、二人共、変なところに送ってしまったわ。私も気付かなくて急いで追い掛けてきたの」
主はこの状況がわかっているらしい。
「ちょっと待ってね」
主は印を結ぶと呪を唱え出す。
すると主や俺たち、時間遡行軍のやつを除いて、ぴたりと動かなくなり静寂が訪れた。
「説明は後ね。とにかく時を止めました。これで戦えるよ」
主が印を結んだまま言うので、とにかく今のうちにやつを倒す事にする。
「光忠、行くぞ」
俺が声を掛けると光忠もにやりといつもの穏やかな表情から一転し、伊達政宗の刀らしい戦闘力の高い眼差しに変わり、すらりと鞘から刀を抜いた。
俺も同様に抜刀し、時間遡行軍を倒しに走る。
俺はやつの後ろに回り、正面は光忠に対応させる。
光忠が斬り合いを結んでいる隙に、後ろ姿の右肩から左腰にかけてやつを斬る。
斬ったところから血が噴き出し、やつはゆっくりその場に倒れる。
一瞬主が顔をひきつらせたが、すぐ印の形を変え、やつをどこぞへ始末した。