第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
いつの間にかフロイドが肥前たちの近くに寄っていて、その長身に男士たちは一瞬目をみはる。
「ヒトにしちゃあ背が高いな。オレたちより高い人間はそうそう居ないぜ」
和泉守が珍し気に言うと、フロイドは「残念、オレ、ウツボの人魚なんだよね」と返し、人魚の存在がわからない男士たちは意味がわからない、といった表情を見せた。
その表情を見てフロイドはにへ、と笑い、そして肥前の前でちょっと首を傾げた。
「タチウオくん、仲間が来ちゃったから帰るの?」
「あぁ、迎えが来たからな」
「また、来る?」
「…それはわからない」
「そっかぁ、そうだよね。元気でねぇ」
「あぁ、あんたもな」
フロイドがバイバイと手を振り、肥前たちはきらきらと光ったと思うと瞬間目を開けられない程の眩しい光が包みこみ、その光が消えた時には姿を消していた。
「あーあ、帰っちゃった」
フロイドは口をへの字にすると、少し離れたところにいたリドルを見付ける。
「あ、金魚ちゃんだ。あーそぼ」
「お断りだね、近寄るな」
「そんなこと言わないで追い掛けっこしよ?」
長い脚であっという間にリドルの側に移動したフロイドは、嫌がるリドルを追い掛け始めた。