第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
「雇い主みたいなもんっスか」ラギーが言い、肥前は少しまゆをひそめるが他に言い方が見付けられなかったらしく、小さくうなづいた。
「…多少違うが…まぁそんなものだ…」
「刀をヒトにって魔法じゃねぇの?」
フロイドがほうきの柄を片手でくるりとバトンのように回転させて言った。
「違う。魔法じゃない…っ」
肥前は一瞬よろけながらも、ばっと立ち上がり自分の目の前から先を見やった。
「どうした?」
レオナが聞いた瞬間、遠くから生徒たちの声が聞こえてきた。
「…やばいっ…魔法が効かねぇ」
「わぁっ、助けてくれ!」
「先生たちを早く呼んでこい…!」
何人もの生徒たちの騒いでいる声がし、肥前はすぐさま刀を表に出すと同時に着衣が戦闘服に代わり、首に巻かれた包帯状のものが二筋なびいた。
「タチウオくん、それ…」
フロイドが言うのにかぶせるように肥前が言う。
「やつらが来た」
途端肥前は走り出し、その後ろをフロイドとラギーとレオナが追い掛けた。
レオナが走りながら「おい、どういうことだ?」と尋ねると、フロイドが「タチウオくんが戦っている相手が現れたみたいだ」と真剣な表情で答えた。