第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
「あれぇ、タチウオくん、どしたの?」
フロイドがスピードを緩めて後ろの肥前に問うと、肥前はごくごく小さい声で答える。
「…酔った…」
「え…?飛行酔い?ヒトもすんの?ジェイドだけじゃねぇの?」
驚くフロイドの近くにラギーとレオナのほうきが近付く。
「タチウオくん、飛行酔いしたってぇ」
「ヒゼンくん、大丈夫っスか?」
フロイドが後ろの肥前を見ながら言い、次いでラギーが聞くと肥前はげんなりした表情を見せつつも小さく頷く。
「…なんとか…」
「おい、地上に戻れ。この顔は我慢しているが限界に近いぞ」
レオナが冷静にフロイドに指摘すると、フロイドは「もうちょっと遊んでいたいんだけど」と少し口をとがらせるものの、肥前のことを気遣ってしぶしぶながら下降した。
「ほらぁ、着いたよ」
地面に着くと肥前はほうきから手を離し、よろりとほうきから足を抜いてその場にへたりこんだ。
「ヒトって弱いねぇ」
フロイドの言葉に同じく降りてきたレオナが言う。
「こいつはヒトじゃないんだろう?」
「あ、そっか、刀とか言ってたっけぇ」