第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
「っ…おぃ…」
肥前は前回と違いほうきで疾走するフロイドに、速度をゆるめてくれ、と頼もうとする。
しかしフロイドは楽しいスイッチが入ってしまい、ラギーとレオナを追い掛ける。
「おい、ラギー。あいつ思った以上に速いな」
それでもほうきに立ったまま、綺麗にバランスを保ってレオナは飛ぶ。
その近くをほうきの柄にまたがったラギーもシシと笑う。
「ほんと、すごいっスね。マジフト部に勧誘しますかね」
「あいつはいらん。あいつひとりに引っかき回されそうだ」
飛びながらしかめつらを見せるレオナに、ラギーはそれもそうかと思いちらりと後ろを振り向く。
「わっ、レオナさん、右に避けて」
ラギーが叫ぶと同時にレオナのほうきが右に方向をずらすと、レオナが進んでいた場所にフロイドのほうきが突っ込んできた。
「逃げないでよぉ」
もう、とほおをふくらませるフロイドの後ろで、肥前は既にぐんなりしつつ、それでもしっかりほうきは握っているのにラギーは気付く。
「フロイドくん、後ろ、後ろ。ヒゼンくんが死にそうっス」
「んぇ?」
ラギーに言われてようやく後ろを見やるフロイドは、すぐ後ろで青い顔をしてほうきにまたがる肥前に気付いた。