第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
「他の刀もこんな感じなんですか?」
ジェイドの問いに肥前は首をわずかに左右に振る。
「刀には種類が有るし、刀工によって作風も変わる。刃文(はもん)の出方も同じものは無い」
「つまり似てはいるものの、ひとつとして同じものは無いということですね」
「そういうことだ」
ジェイドの確認のような言葉に肥前は同意する。
「オレをヒトに顕現させた人がオレの主だ。前も主がオレを探して戦闘態勢だった事から、仲間の男士を送ってくれた。今回もオレが居なくなっているのに気付けば探して、迎えに来てくれるだろう」
「ほぅ、きみには雇い主がいるということですか」
アズールが興味深そうに眼鏡のブリッジに触れながら聞く。
「雇い主…まぁそう言えないでも無いが…そういうことにしておこう」
審神者のことを説明するのが面倒になった様子の肥前は、それで会話を打ち切ろうとし、本体の刀の存在を消した。
「あ、消えた」
フロイドは短く言い、そして目的を思い出したようにほうきを手にする。
「それじゃ、タチウオくん、空を飛びに行こっか」
「…あぁ」
空を飛びたいらしい肥前は、フロイドの言に素直に頷いた。