第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
それらに対し、肥前は眉を寄せて困惑する。
「…なんで騒がれるのかわからん。戦うのはオレにとっては当たり前だ」
「戦うのが当然とはぶっそうなところで育たれたようで」
ジェイドの言葉に肥前はきっぱりと否定する。
「違う、育ったのではない。オレは戦うために顕現された刀だ。ヒトの姿を得ているが人間ではない」
その言葉にジェイドと側にいたアズールは目を丸くする。
「え…ヒゼンさんは人間ではないのですか?」
「違う。オレは刀だ」
肥前は左手を前に出して何やら念じる姿を見せた、と思うとその手に少しカーブした鞘に入った日本刀が表れる。
「魔法…使えるのですか?」
アズールが驚く。
「これがオレの本体、肥前忠広という日本刀だ」
左手で鞘を持ち左腰にそれを下したと思うと、右手ですらりと刀を抜いた。
アズールたちの目の前に光る刃が迫り、彼等は目をみはった。
「これが…ニホントウ…?」
「刀が生まれた国が日本と言うから日本刀と呼ばれる」
アズールが感心したように刀に近付いて刃を見て言った。
「美しい…ですね…」