第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
「ヒゼン、おまえすごいな」
近くにいた生徒に言われた肥前はまゆをしかめ「何が?」と問う。
「あいつだよ、リーチ。よくあいつと普通に話せるな」
やはり別の生徒に言われ、肥前は意味がわからないと首を傾げる。
「だからさ、気分屋で気に入らないと暴力的だし、授業も平気でさぼるし、そんなやつと平然と対応するなんてすげぇよ」
「…そうか?」
暴力は全く無いものの、気分屋だったり内番をさぼる男士は本丸にいるので、フロイドの気まぐれには既に慣れたくないが肥前は慣れているのだ。
ヒゼンはフロイドの扱いがうまい、とすぐに評判が立ち、前回の時間遡行軍と戦った様子を見た生徒たちも更に騒ぎ立て、肥前は嫌が応にも目立ってしまった。
「おい、あいつか。リーチの扱いがうまくて、魔法の効かないやつらと戦った異世界の者は」
「オレ、あの時の戦い見たぜ」
「オレも見たかったな。でもあれだろ、このマジカルペンを取られたんだろ?魔法の効かないやつらにさ。それはちょっと怖いかも」
「いや、確かにあれは怖かった。慌ててそこにいた奴ら逃げたもんな」
「ヒゼンは自分の世界で、あいつらといつも戦っているんだろ」
「やっぱすげぇな」
「タチウオくん、すげぇ。ちょー噂になってんじゃん」
周囲の声を聞き付けたフロイドにからかわれる肥前に、フロイドの双子のジェイドはおっとりと「ヒゼンさんの強さは寮や学年を超えて知られていますよ」と言った。