第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
「えー、なに、それぇ」
ぶぅぶぅ文句を言うフロイドに、ジェイドが横から口を挟む。
「フロイド、あなたが好きに組んで良い、と答えたからこうなったのでしょう。しかたありませんよ」
「なんだよ、ジェイド。アズールの味方かよ」
むくれるフロイドにジェイドが微笑みながらしれっと言う。
「そうです、今回はフロイド、あなたの言葉が足りなかったのですよ」
その態度にフロイドは、アズールやジェイドにこれ以上何か言ってもはぐらかされるのがわかり、無言で飴を口に入ればりばり噛み砕き始めた。
休みのないモストロ・ラウンジの仕事をさぼってしまいたかったフロイドだが、アズールがよく見張っていて逃げられず、肥前と空中散歩が出来ない一週間だった。
ようやく休みの入った日、フロイドは食堂で肥前を捕まえる。
「タチウオくん、みーつけたっ」
「…フロイド、なんだ?」
肥前から名前を呼ばれ、フロイドは機嫌が益々良くなる。
「今日、オレ、休みなんだぁ。一緒にほうきに乗ろ?」
「…乗る」
ぼそりと賛同した肥前にフロイドは喜ぶ。
「よし、決まりぃ。また前と同じところにおいで。忘れんなよ?」
最後の「忘れんなよ」にドスが入って、肥前の周囲の生徒たちは震えあがるものの、普段のフロイドの暴れぷりをしらない肥前は、いつも通り平然とした表情で応じた。