第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
「フロイド、あなた、ずいぶんあのヒゼンさんが気に入っているようですね」
フロイドがポケットから飴を取り出し口に放り込むのを見ていたアズールが、昼の食堂の様子を聞く。
「うん、タチウオくん、変におもしれー」
ばりばりと噛みながらフロイドは答える。
その音と声が一緒になって聞こえてくる様に、品が無い、と少しまゆをひそめたアズールだが、言ったところで直すフロイドではないので、それについては流してアズールはまた言う。
「それで空を飛ぶのはいつの予定です?」
「なんで?」
次の飴を放り込みながらけげんな顔をして、ソファに寝そべるフロイドは椅子に座って書類を片付けながら話すアズールを見やる。
「ちょうどシフトを組んでいたところです。日にちが決まっているなら、その日は空けるようにしましょう」
「そーぉ?アズールやさしいねぇ、気持ち悪いけど。でもまだ決まってないから、好きに組んでいーよ」
アズールはフロイドの言葉にむっとしたような表情を一瞬見せるものの、シフトを好きに組んで良いと言われたので、嫌がらせのように無言で一週間わざと休み無しで組み込んだ。
「あーっ、なんだよ、これ。アズール、ひでぇじゃん!」
案の定フロイドからは文句を言われるが、アズールは涼しい顔で言い返す。
「おまえ、好きにシフトは組んで良いと言いましたよね?だからこのようにしましたけれど」