第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
「あれ?またおまえ、来たの?」
以前と同じ教室へ入っていくと、同級生たちがざわつく。
「あの時は助けてくれてありがとうな」
「またあの魔法の効かないやつらがやってくるんじゃねえだろうな?」
前回マジカルペンを獲られないよう守った事について礼を言う生徒もいたが、大半はクロウリーと同じように、また、時間遡行軍がマジカルペンを奪いにくるのではないかと危惧する様子だった。
『まぁ、時間遡行軍は魔法が効かなかったし、この世界の魔法使いには得体の知れない者としか認識されねぇだろう』
肥前はこの世界における時間遡行軍をそう認識する。
授業が終わって昼の食堂へ同級生と移動したところで、フロイドが肥前に気付いた。
「あーっ、タチウオくんじゃん!自分の世界に帰ったんじゃねぇの?」
大声で肥前に話しかけながら、スタスタとまっすぐ向かってくるフロイドに、周囲はすっと避けて彼に道を作っていた。
「…また来てしまったんだ」
肥前はぼそりと言うと、フロイドは楽しそうな表情を見せる。
「また空中散歩するぅ?俺がほうき、飛ばしてあげるよ?」
肥前はフロイドをまっすぐ見て問う。
「…良いのか?また、乗せてくれるのか?」
喰いついた肥前にフロイドはぎざぎざの歯を見せて、「いーよぉ、タチウオくんは特別」と言って、またほうきで肥前は空を飛べる機会が出来た。