第9章 貴女は堕ちて、ぼくに。 〔燭台切光忠/R18〕
主は呑み過ぎて舟を漕いでいる刀剣たちを起こして、自分の部屋へ戻って寝るように促し、ぼくと歌仙くんはその近くで食器を片付けていた。
「ほら、ここで寝ないよ、風邪ひくからお部屋戻って…ぎゃっ」
何やら主の叫び声が聞こえたので覗くと、居眠りしていた和泉守兼定が寝惚けて主をぎゅうと抱き締めていた。
「ちょ…和泉守さん…離して…っ」
「んー、国広、あったかいなぁ…」
「いや、堀川国広さんじゃないからっ」
ぼくは和泉守へ近寄り、主を抱き締めてるその両手をぐいーっと引きはがし主を解放した。
「ありがとう、光忠さん」
和泉守には代わりに座布団を抱きかかえさせたから問題無いってね。
時々主はこうして酔っぱらいに絡まれつつも、何とか全員それぞれの部屋へ戻し、ぼくと歌仙くんが台所で洗い物をしている間、広間の片付けを一人で受けてくれた。
「広間は片付け終わったよ、二人共朝からここに立ってもらって、疲れているのに本当にありがとうございます」
台布巾を手にして台所に戻ってきた主は、ぼくたちの洗った食器を一緒に拭いてくれる。
「主こそ疲れているでしょう、先に休んでいいよ」
歌仙くんが声を掛けるけれど、主は首を横に振る。
「ううん、二人のほうが絶対疲れてるもん。だから最後まで手伝うよ」
確かに二人より三人のほうが少しは早く終わるだろう、だから、そのまま手伝いをお願いしようやく皿を全部拭いて片付け終えた。