第9章 貴女は堕ちて、ぼくに。 〔燭台切光忠/R18〕
そして恥ずかしそうにもぐもぐと口を動かすんだ。
また次のを取ってあげようとしたら、ぼくの手から箸を取った主が唐揚げをつまみあげ、反対にぼくの口元へ持ってきた。
「お返しだよ、光忠さん」
いたずらっこのように目が笑う主の顔に、でも何だか妙に楽しくてそのまま唐揚げをぱくりと口にした。
「主、ごちそうさまです」
もぐもぐしながら言うと、ぼくが全然照れていないのが面白くないのか、口をへの字に曲げて主は首を傾げる。
「あれ?光忠さん、全然照れてない…」
「照れないよ、むしろ嬉しいよ」
ぼくの言葉に眉間にしわを寄せた主は、逆効果だったか、とぶつぶつ言っていた。
ぼくの隣でそんな風にしている主を見ていると、主を独占しているみたいでぼく自身は嬉しいけれど、他の刀剣にしてみれば面白くないのだろう。
主を呼ぶ声がして主はそれに気付くと「じゃあね」とそちらへ足を運び、そちらの刀剣たちに酒を注いでいた。
ま、いいか、宴会が終わったらぼくはごほうびをもらうつもりだからね。
そして一部では飲み過ぎて大騒ぎになりつつも広間では宴会が続き、日付が変わる頃にお開きとなった。
「短刀たち、早く歯を磨いて寝なさい」
一期一振や他の短刀を持つ太刀たちが、早く寝るように促し彼等は部屋へ戻って行った。