第9章 貴女は堕ちて、ぼくに。 〔燭台切光忠/R18〕
「それしかないでしょ、ほら、口開けて」
持ち上げた天ぷらでちょんちょんと唇をつつくと、顔を赤くした主が口を開けたので天ぷらを押し込む。
主の口の中に天ぷらを押し込むと、彼女はふところから懐紙を出して口元を隠しながら咀嚼するのだが、その顔はむすっとしてこちらをにらんだままだった。
あれ、何か怒らせるような事したかな。
咀嚼してごくんと呑み込んだところで主が口を開く。
「光忠さん、恥ずかしいから『あーん』は止めてください…」
あれ、天ぷら食べさせたの恥ずかしかったんだ。
「駄目なの?どうして?恥ずかしい?気にする事ないよ、ここなら。それより美味しかったでしょ?」
「あ、うん、美味しかったけど…」
「なら、良かった」
主から、揚げた天ぷらが美味しかったの言葉をもらえ、反対にぼくが喜ぶと主が参ったとばかりに苦笑した。
「ふふ、光忠さんには参りましたね」
肩をすくめる主に、ぼくは更に言う。
「そう?ぼくが全部食べさせてあげようか?今度は歌仙くんの作ったつくねはどう?」
「いや、もう自分で食べられるから大丈夫だよ。ん、もう、光忠さんてば…」
つくねを取り、また主の口へ運ぶと、主はもういいよ、と言いながらも結局つくねを口に入れる。