第9章 貴女は堕ちて、ぼくに。 〔燭台切光忠/R18〕
その瞬間息を呑んだ主の表情は、完全にぼくに捕らわれた兎のようだった。
主はぼくがどんな御礼を望むのか、わかっているようだ。
ぼくは主と視線を外してから、後で起こる事を想像してくすりと一人で小さく笑う。
たくさんの料理を用意し、主が買ってきた酒類を並べ、宴会の支度が整う。
広間を開放すると、それまで待っていた刀剣たちが集まってきてそれぞれ座ると、主が立ち上がって挨拶した。
「えーと、皆様、いつもありがとうございます。ささやかながら歌仙さんと光忠さんにお手を掛けていただきまして、この宴会を催させていただきます。ひとときですけれど、皆様が楽しんでくださると嬉しいです。えーと、乾杯」
持っていたグラスを主が上に掲げて乾杯と言うと、みんなで乾杯と応え宴会が始まる。
それぞれが好きな料理を取り、酒を飲む刀剣は酒を自分のグラスに注ぐ。
わいわいと楽しそうな様子が傍からみていてもよくわかる。
「光忠さん、今日は本当にありがとうございました」
主がちょこんと横にやってきて、ぼくのグラスに酒を注ぎ足してくれる。
「ありがとう」
ぼくがグラスを持ってひとくち飲むと、ほっとしたような表情で主はぼくを見やる。
「みんな楽しそうなの。これも歌仙さんと光忠さんのお陰です」
「ぼくも楽しんでいるから気にしなくて良いよ。それより、これ食べて」
ぼくは自分の取り皿に取っていた天ぷらを箸でつまむと、主の口元へつつく。
「え…これ、えーっと、あーんしろって事?」