第47章 嘘つきな秘密 〔明石国行/R18〕
万屋から本丸へ戻ると愛染と蛍丸は粟田口の部屋へ走って行った。
「ただいまーっ、誰がいるー?」
「お土産だよーお菓子、食べよーっ」
廊下をばたばた走っていく二振りを見て、明石は「走らない」と注意しようとして、間に合わなかったので苦笑した。
「全く速いですなぁ」
肩を少しすくめると明石は中へ入り、すたすたと自分の部屋とは違う方向へ向かった。
「主はん、ええです?」
「はい、どうぞ」
明石は声を掛けると障子を開ける。
すると目の前にちょうど休憩中らしく、カップを手にしたこの本丸の主が座っているのが目に入った。
「ちょうど一休みしていたの」
主はどうぞと明石を中へ勧め、明石は中へ入り障子を閉める。
「今日の近侍は…?」
休憩しているならなおさら主の隣に誰かがいるはずなのに誰もおらず、明石はいぶかしむ。
「今日は後藤くんと厚くんなのよね。だから今、お菓子持ってお部屋へ戻ってるの」
「あぁ、そうでっか。じゃ、失礼」
明石は粟田口ならおやつの時間に部屋に戻って、みんなと食べていてもおかしくないな、と納得する。