第46章 肥前、捻じれた世界へ行く 〔肥前忠広〕
「ウニちゃん!」
近寄ってきたフロイドは、おれたちの姿を見て何も言わなくても察したようだった。
「…仲間が来たんだね」
「…あぁ。箒で空を飛べたの、楽しかった」
ひとつだけ感想を告げるとやつは大きく笑顔を見せる。
「あっは、良かったねぇ。ウニちゃん、それいつもの恰好?」
やつはにっと笑っておれの姿を見やった。
刀を差したいつものおれの戦闘服姿に、おれは「あぁ」と短く返すとやつは言った。
「へぇ、ウニちゃんのとこ、みんな着てるの違うしかっこいいじゃん」
「…そうか」
おれはどう返事をして良いかわからず、肯定するしか出来なかった。
「ウニちゃん、帰んの?」
やつはひょいとおれの顔を覗き込んでくるので、おれは当然頷いた。
「おれは刀剣男士。この刀の持ち主である主がおれたちを刀から顕現させ、歴史を改変しようとする敵と戦っている。おれがここにいることを主が気付いて、仲間を応援に寄越してくれて敵を倒したから、おれたちがここにいる必要はもう無い」
「…そっかぁ…元気でね」
やつはおおきな口を開けて笑ってきたので、おれも最後に礼を言った。
「空、飛ぶの、楽しかった。こっちこそ…ありがとう」