第46章 肥前、捻じれた世界へ行く 〔肥前忠広〕
「まさか全く違う世界に行ってしまったとはわからなくて、主、ものすごい探してたんだよ。長谷部なんて『肥前のことは諦めましょう。主のおからだが心配です』なんて進言していたからねぇ」
戻ったら長谷部を締めてやろう、そうおれは思った。
「主がようやく肥前を見付けたと思ったら、何かピンチだったらしくておれたちに助けに行ってって、ひとこと言われてそのままここに送り込まれたんだ。気付いたら肥前の目の前にいて、さらに時間遡行軍に囲まれていたってところかな」
「魔法を使えるところねぇ、こうしてみると違いはわからないけどさ」
和泉守は気付いたように、こちらを見ている生徒たちに呼びかけた。
「おぅ、もう時間遡行軍はやっつけたからな、自分のと間違えて持っていくなよ」
わっ、と生徒たちが走りよってきて、落ちているペンを拾って自分のものを持って行く。
「…あのぅ…」
おそるおそるといった体で話し掛けられると、制服を着た生徒が近寄ってくる。
「あの…ペンを…取られないようにしてくれて、ありがとう」
「おぅ、気を付けろよ」
和泉守がにっと笑って言うと、その生徒は何度もこちらに頭を下げ去って行った。
「さて、そろそろ戻されるかな」
「肥前もようやく帰れるね」
先生が空を向いて言う。
おれもここから本丸へ戻れるんだな、と思っていたら、あの緑色のフロイドの髪の毛と長身が見え、見えたと思ったらあっという間にこちらへ来た。