第46章 肥前、捻じれた世界へ行く 〔肥前忠広〕
「おれもよくわからんが、魔法が使える世界らしい」
大和守に言うと彼は「へぇ」と目を見開いた。
「それは楽しそうだね。魔法、見てみたかったなぁ」
おれをうらやましそうに言いながら、大和守は目の前にきた時間遡行軍を袈裟掛けに斬りつける。
おれも軽く走って左から持ち上げた刀を一気に上に振り上げ、遡行軍の身をふたつに斬り裂いた。
おれを含めて六振りで形勢逆転し、時間遡行軍を全て倒した。
「おっつかれぇ」
ぱちんと鞘に刀を収め、おれは遡行軍が集めていたペンらしいものがあちらこちらに落ちているのに気付き、男士たちに踏まないよう言った。
「おい、そこらへんに落ちてるそれ、踏むなよ」
「うぉ、これのことか?なんだ?これ」
和泉守があやうく一本を踏みそうになる。
「おれもよくわからんがここの生徒たちが使うものだ」
「肥前くん、主がきみがどこへ飛ばされたのかここ数日ずっと探していたんだよ」
先生に言われて、やっぱりそういうことだったかと思う。
「そうなるだろうと思っていた。部隊が遠征から戻っておれがいない事に気付けば、主がおれの行き先を探すだろうと」
おれが言うと加州清光が肩をすくめる。