第46章 肥前、捻じれた世界へ行く 〔肥前忠広〕
「おれのどこが面白い?」
正直に目の前の背中に言うと、やつは前でケラケラと笑った。
「なにそれ、おもしろ。ウニちゃん、余計に面白いんだけど。おれにとっては十分言ってることとか面白いよぉ。ウニちゃん、そんなに我慢ばかりして生きてるの?」
我慢ばかりして生きてる?
おれは我慢をしているのか?
やつの言葉におれは本丸での生活をゆっくりと振り返った。
例えば、先生が余計なことをしようとしてそれを止めることは、おれにとって我慢していたことなのか。
いや、嫌だと思った事はない。
真面目に見える先生は実はかなり天然で、黙っているととんでも無い発明をして周囲を驚かせる。
以前土佐へ出陣した時、時間遡行軍の残骸で罠を作り、おれたちを驚かせたが唯一喜んだのは鶴丸国永だった。
いたずらが好きな鶴丸ととんでも発明の先生が組んだ日には、本丸中が掻き回されだいたい被害を受けるのはへし切長谷部だったので、後でおれが何故か先生の事について「あれは止めてくれ」と言われるのだが、言われることも嫌ではない。
おれは我慢をしているのではなく、好きで先生の面倒を見ているという事か。
「…おれは我慢はしていない。先生の面倒を見るのは好きでしていると思う」
「せんせぇ?って誰?イシダイせんせぇとは違う?」
「いや、違う。おれの世界に博識故先生と呼ばれている男士がいる」