第46章 肥前、捻じれた世界へ行く 〔肥前忠広〕
「ちゃんと目ぇ開けてる?景色見ろよ?」
言われて目をつむっていた事に気付きおそるおそる目を開け、しがみついているほうきから周囲へと目線だけ動かしてぴたりと止まる。
既に建物の高さと同じようなところまで浮いているのだが、浮く前に怖かった思いは不思議と消えていて、むしろそのフワフワと浮いている感覚を面白いと思う自分がいる事に今更ながら驚く。
「…すげぇな…」
ついおれが発した言葉に、フロイドは満足そうな口調で言う。
「すごい?アズールとジェイドは飛行術が苦手でさ、ほんの数センチしか浮かないんだよぉ」
自分の幼馴染と兄弟の事を話題に出すフロイドにおれは言った。
「数センチでも浮くならいいじゃないか。おれは魔法なぞ使えないから、浮くことすら出来ないからな」
「あー、そうだよね、それ、アズールとジェイドに言っておこぉ」
浮きながらフロイドは嬉しそうに言い、もうちょっと上がるね、とほうきを上昇させた。
完全に学園を見下ろす距離まで上昇し、おれはこの学園が島に建てられていることを知った。
「へぇ…ここって島なのか…」
「あれぇ?ここの場所すら知らないの?地理も知らないとかぁ?」
この学園の場所も何も把握していないので頷くしかなかったが、おれが何もわかっていないと改めてやつは思ったらしく、「ウニちゃん、おもしろ」と言われた。
おれは面白いと言われた事が無いので、何が面白いのかさっぱりわからない。