第46章 肥前、捻じれた世界へ行く 〔肥前忠広〕
ちんぷんかんぷんな授業が終わるとフロイドはさっさと立ち上がり、「じゃあ授業全部終わったらねぇ」とおれに手を振り、すたすたと教室を出ていった。
すぐ近くに座っていた教室のやつらが寄ってきて、「リーチに目ぇつけられちゃったなぁ」とやけに同情的におれに声を掛けていく。
おれにしてみればフロイドより時間遡行軍のほうがよほど敵だ。
この世界に時間遡行軍がいるのかはわからないが、もし表れたらおれは本分を忘れず、たった一振りでもこの世界を助けなくてはならないことになるだろう。
おれが刀剣男士である事を知られても、おれはやるべき事をやるのみ、そう思っていた。
その日の授業が終わり、おれはフロイドの指定した場所へ足を運んだ。
とにかく気まぐれと聞いたので、おれに魔法を見せると自分から言った事はもう忘れて、指定した場所へは来ないかもしれない、と思いながら行くと、既にフロイドは何故かほうきを片手に立っていた。
掃除でもするのにおれを手伝わせるのか、そう思っていると、おれに気付いたフロイドが「あ、きたきた。ウニくん、待ってたよぉ」
ウニ?ウニとは海にいるとげとげしたやつか?
おれが怪訝な表情をしているのに気付いたのか、フロイドはにこにこしながら言った。
「おれ、海の生物の名前でヒトを呼ぶんだぁ。ヒゼンは頭がとげとげしてるからウニくん」
勝手におれをウニ呼ばわりされるのはあまり良い気分はしないが、どうもそういう風に呼ぶのはやつの親愛の印らしい。
「で、どんな魔法を見せてくれるんだ?」
ウニ呼ばわりについては何も言わず、呼ばれた件についておれは言った。
するとフロイドは持っていたほうきをおれの目の前に突き出した。