第46章 肥前、捻じれた世界へ行く 〔肥前忠広〕
「やはり貴方は魔法の無い他の世界からいらしたかたですね」
俺はやはり意味がわからず、自分の前の置かれた茶を口にする黒づくめを見た。
カップを置いた黒づくめは話し出し、俺はどうも本来のところから違う世界へ飛ばされてしまったらしい事を知る。
「…俺は戻れるのか?」
何より思うのは主の元へ戻れるかどうか、だ。
「貴方は先程ご自身が刀の付喪神だと言いました。ヒトでなくモノであれば、貴方の元の世界の持ち主が呼び掛ければ戻れる可能性は高いでしょう」
主が呼び掛ければ戻れる可能性は高い、それを聞いて俺は少し安心した。
しかし、俺はいち部隊の中の一振りで、主より特命を受けて遠征中だった。
早々部隊が本丸に戻るとは思えないし、そうすると主が俺を居ない事を知る由もない。
つまり部隊が主命を終了し、部隊が本丸へ戻らない限り、俺は行方不明のままだ。
魔法とかいう不思議なものが存在する世界。
「見た目からすると貴方はここの学生と変わらないようですし、しばらく留学生として勉学に励むとよろしいでしょう」
黒づくめの判断で勝手に俺は留学生扱いされ、学校に通うことになってしまった。
学校なぞ通った事は無いし、知っているのは以前の持ち主の通った寺子屋くらいだ。
突然始まった留学生生活は、わからない事だらけで戸惑うばかりだったが、声を掛けてくれる生徒が多く非常にやっていく上で助かった。
付喪神であることも知られておらず、俺は遠い国から魔法が使えないものの魔法を勉強しに来た物好きな学生、と黒づくめによって紹介されていた。