第46章 肥前、捻じれた世界へ行く 〔肥前忠広〕
俺が名乗ると、黒づくめは「ほうほう、なるほど」と驚きもせず俺に言う。
「なるほど、貴方がヒトで無いのはわかりましたけれど、その刀がヒトの姿をとったもの…付喪神という存在は初めて見ましたね」
黒づくめはちょっと首を傾げ俺を上から下まで何度も不躾に見ると、俺に言った。
「学園長室へいらっしゃい。ここでは何ですから、少しお話ししましょう。どうも貴方は違う世界から来られたかたのようですね」
違う世界?
その言葉が引っ掛かったが黒づくめは後ろを向くと、こちらを見ることもなく変わった建物のほうへ歩き出してしまったので、仕方なく俺もその姿について行った。
黒づくめの後ろを歩きながら、確かここは学校と言っていたせいか、同じ服装のヒトとすれ違う。
みな黒づくめに挨拶をするものの、俺には不思議なものを見るような眼差しで、俺は居心地がすこぶる悪かった。
「さ、どうぞ」
廊下の奥まったところに扉が有り、それを手を触れることなく開け、俺に入るよう促すのですぐ抜刀出来るよう左手を柄にかけておいた。
部屋に入った俺を黒づくめは座るよう言うので、目の前の洋風の椅子に腰掛けると、宙に浮いた茶器が飛んできた。
「どういう…ことだ…」
空飛ぶ茶器なぞ聞いた事がない。
茶器は意思を持っているかのように勝手に茶を淹れ、俺に茶の入ったカップが飛んできて目の前に置かれる。