第46章 肥前、捻じれた世界へ行く 〔肥前忠広〕
「私の問いかたが悪かったですかね、当学園は知らないですか?」
しつこいので即答した。
「こんなところ、知らない。聞いた事もない」
「そうですか…ところでその左腰にあるのはなんですか?サーベルとは違いますよね?」
問われたのは腰に差している刀のことだ。
俺はゆっくりとその場に立ち上がると、一歩黒づくめから後ろに下がり、腰を低くすると抜刀して刀を正眼に構えた。
「これ以上近寄るな、斬るぞ」
俺の言葉に黒づくめは怖がる事もなく、むしろ「おお…こわ」と楽しそうに言うとまた返してきた。
「それ、もしかしてカタナというものですか?初めて見ましたけれど、綺麗なものですねぇ」
顔が見えないのでどういう表情をしているかわからないが、うっとりとしたような声でやつは俺の刀を近付いて見に来た。
そして構えているにも関わらず、ぬぅと俺の刀の刃を舐めるように端から端まで見つめた。
「いやぁ、カタナ、初めてみました。ところで何故貴方がカタナを持っているのですか?どうも貴方とその刀が繋がっているようにしか見えないのですがね?」
俺が刀と繋がっているなんて普通なら気付きもしない事で、俺は初めてこの黒づくめが一筋縄ではいかないおとこだと気付く。
俺は刀を鞘に仕舞うと黒づくめのおとこに言った。
「俺は肥前忠広。この刀の付喪神で、人間に代わって歴史を改変しようとする者たちと戦う刀剣男士だ」