第44章 ××しないと出られない部屋その3 〔五虎退〕
私は虎さんの首に手を置いて撫でる。
小さい虎だった時と違い抱っこは出来ないけれど、毛並みの柔らかさは変わっておらず、五虎退くんが丁寧にブラッシングをしているんだろうな、と思わせられた。
「虎さんはいつも毛並みがつやつやね」
撫でながら声を掛けると、虎さんは目を細めて気分良さげに喉を鳴らす。
そして、虎さんはごろんと横になり、もっと撫でろ、と言わんばかりの体勢をとったので、私は全身を撫でつける。
「ふふ…もふもふ」
ぱふん、と虎さんのおなかに顔を埋めてみると、ふかふかの毛に包まれる。
「あったかいねぇ」
虎さんを撫でながら自分がもふもふに包まれ、心地よい浮遊感が襲ってきた。
「…ちょっと…だけ…」
虎さんを撫でつつ、うっとりと目をつむると、途端まどろんでしまった。
ふわふわと包まれる感じに柔らかく暖かいものが触れる。
開きたくない目をやっとの思いで開くと、真正面にものすごいアップで誰かの顔がせまっていて、私はぎょっとして目を覚まして少し頭を後ろにずらした。
まじまじと見ると、先程の私と同じようにすやすやと小さな寝息をたてているのは、五虎退くんだった。
見ると虎さんも丸くなって寝ていた。
あぁみんなでお昼寝しちゃったのか…そう気付いて五虎退くんを起こす。