第44章 ××しないと出られない部屋その3 〔五虎退〕
「おお、どうした、その恰好?」
私たちの恰好に驚く男士たちに、これこれと説明すると男士たちの間でも○○しないと出られない部屋は有名らしく、口々に衣装交換だけで済んで良かったなぁ、と言われる。
そして駆け付けた一期一振さんは、やはり思った通り五虎退くんの姿に大喜びし、どこからかカメラを持ってきてばしばし五虎退くんを撮っていた。
「一期さん、ついでに私も撮ってくれないかしらねぇ…」
ついでに頼んでみると、ようやく私に気付いた一期さんが言う。
「あぁ主、五虎退の恰好をしていらしたのですな、気付かず失礼しました。じゃあ一枚だけ」
五虎退くんはばしばし撮って、私は一枚ですか…と内心この熱の差に苦笑しながらもせっかくだから一枚撮ってもらった。
「じゃあ、これ、着替えてくるからお先に」
声を掛けると自室へ戻ってさっさと着替えると、外から五虎退くんの声がする。
「主さま、着替えて戻ってきますので、ちょっと席を外します…」
「うん、わかった。虎さんだけこっちに置いていって良いよ?」
「よろしいですか…?じゃあ、虎さんだけ…失礼します」
障子が少し開くと、大きな虎がのそりと部屋に入ってきた。
「いらっしゃい、虎さん、ミルク飲む?」
返事は無いもののこちらをじっと見るので、いるのかな、と深皿を用意しミルクを注いで虎さんの前に置くと、嬉しそうにぴちゃと舐めだした。
大きくなってもぺろぺろとミルクを舐める虎さんの仕草が可愛くて、終わるまで様子を見ていたら「失礼します」と五虎退くんが着替え終えて部屋へやって来た。